【広報コラム】「節句に寄せて」(2024・5)
2024年8月20日
5月5日は「端午の節句」で、男の子の成長を願って、武者人形や鎧よろい・兜かぶとなどを出すお家も多いでしょう。3月3日のおひなさんなどとともに、伝統的な文化に触れられる絶好の機会です。
武者人形の題材に好んで用いられる金太郎は、今から千年ほど前、藤原道長(ふじわらのみちなが)の時代に実在した武士がモデルとなっています。ひな人形もまた、この頃の習俗を再現したものです。奈良時代までに中国や朝鮮半島から学んだ文化・技術を咀嚼(そしゃくし)、京都を中心に、わが国の古典的な文化が花開いた平安時代は、日本の歴史にとって特別な時代で、それゆえに、人形を飾る風習が始まった江戸時代の人形作者は、そのモデルを平安王朝に求めたのです。江戸時代の人びとは、『竹取物語』や『源氏物語』などを愛読し、「有職(ゆうそく)」といって、公家(くげ)の衣装やしきたりを盛んに研究しました。江戸時代のひな人形がしだいに当時の習俗に忠実なフィギュアとなっていくのは、そうした研究の進展に支えられたものでした。来年はぜひ、おひなさんを通じて、平安時代のみやこの典雅に思いをはせてみてください。
もっとも「有職」にとらわれない人形も古くからあり、ヨーロッパ王室の作法にならった皇室に準じて、大正時代におひなさまとお内裏(だいり)さまの場所が左右逆になるなど、時代による変化も見過ごせません。かつては豪壮な人形が好まれましたが、ライフスタイルの変化にあわせて、現在はコンパクトなものが増えており、人形は、各時代を投影する存在でもあるようです。
▲おひなさん(三人官女)
(2024年5月号掲載)
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