【コラム】高井田山古墳ってどんな古墳? (3)横穴式石室

2023年3月23日

 埋葬施設は、板状の石を積み上げて築かれた右片袖式の横穴式石室です。玄室から見て右に壁、左に羨道があるタイプの横穴式石室を右片袖式といいます。石室の上半分は調査前にすべて崩れており、両側壁の中央附近も玄室内に倒れこんでいました。また、西側壁中央部は盗掘と考えられる後世の撹乱によって損なわれていました。
 石室は花崗岩の風化層を整形した後、長さ5.4m、幅3.5m、深さ約1mの墓坑を掘り込んで築かれています。玄室の長さ3.73m、幅は奥壁部分で2.34m、玄門部分で2.26m、羨道の長さ約2.0m、幅は玄門部で1.18m、墓道の長さは約2.7mを測ります。玄室主軸は、北から23°東へ振っていますが、ほぼ南に開口しています。
 奥壁の最も残存状態が良い部分で、高さは1.3mを残しています。玄室の四隅はほぼ直角になり、周囲の壁は垂直に立ち上がっていますが、奥壁両隅の最上部は側壁にまたがるように石材が積まれ、若干の持ち送りが確認できます。この状況から、床面から約1mの墓坑上面の高さまで石材を10段前後垂直に積み上げ、それより上部では石材を持ち送ってドーム状の天井を築いていたと考えられます。壁面を垂直に積み上げている部分では控え積みは認められませんが、持ち送っている部分には控え積みがあったようです。天井石は3石程度と推定され、その1石と考えられる大形の石材が玄室内から出土しています。
 羨道は入口を閉ざすための閉塞石が良好に残っていたので現状保存することにしました。そのため細部の構造が確認できていませんが、現状から考えると羨道の南端はやや東に振っているようです。羨道の天井石は1石のみと考えられます。羨道部に塊石を積上げて入口が閉塞されています。玄室床面はほぼ平坦ですが、羨道南端は玄室床面より約15cm高くなっています。また、玄室床面には一面に小礫が敷かれていますが、この礫敷きは玄門部で途絶えて羨道部には続いていません。
 石室の石材は、割石もありますが、大半が自然石です。奥田尚氏の鑑定によると、カンラン石輝石安山岩、輝石安山岩で、南東約1kmにある芝山周辺で採取したものと考えられます。芝山の安山岩は、前期古墳の竪穴式石室石材として使用された石です。レンガのような積みやすい石を探したところ、芝山の石材を発見したのでしょう。
 石室内からは多数の副葬品が出土しており、すべての出土品が柏原市有形文化財に指定されています。

(安村)

コラム3

高井田山古墳横穴式石室

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