創造の森再生プロジェクト活動記~森林環境保全員活動レポート~

2020年11月25日

森の再生を始めましょう

市では、初の試みとして、8月~10月の3カ月間、国の森林環境譲与税を活用して、森林環境保全員による森林整備を実施しました。その模様について、担当の諸岡さんに話を聞きました。

30年後のために今すべきこと、できること

私たち人間は、自然の一員であり、酸素、環境、文化、衣・食・住に関わる物質の提供など、自然からたくさんの恩恵を受けて生かされています。

しかし、生活様式の変化に伴い、地球温暖化が進み、自然環境もどんどん悪化してきています。私たちの身近な里山でも、森林に手が入らず、放置され、竹や笹が拡大したり、林床に光が入らず、生物相が貧弱になり、災害にも弱くなってきています。

そのため、地球規模では、2015年に締結されたパリ協定に基づき、各国で地球温暖化防止に向けて様々な取組みが進められています。我が国においても、植林なども進めて、2050年に二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることを目標とされつつあります。森林分野では、2019年度に国の森林環境譲与税制度が創設されました。

2050年の目標は、とても困難な目標です。国だけで達成できるものではありません。
また、木は1年や2年で急に大きくはなりません。行政や企業、市民などが、30年後を見据えて、それぞれでできることを行って、一体となって取り組んでいく必要があります。

柏原市における森林整備の取り組み

柏原市においても、手を入れていかなければならない森林がたくさんあります。そのための森林整備の担い手を確保・育成していく必要があることから、今年度は、新型コロナ感染症対策も兼ねて、緊急雇用対策として、5名の作業員とそれを指導する1名の指導者を3ヶ月間雇用し、高尾山創造の森において、森林の再生活動を行いました。
創造の森内の7つの歩道と、冒険の森、郷土の森など、茶色で色づけされたところが、保全活動を行ったところです。
 

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研修と作業の様子(令和2年8月~10月)

5名の作業員に森林整備の担い手になっていただくために、森林整備の技術と知識、さらに、生物多様性保全についての知識、さらに、それらを事故無く安全に行うための安全管理について、しっかりと学んでいただきました。

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作業は、最初は、そのアクセスのために必要な歩道の草刈りから。
どの歩道も、笹が繁って歩きにくく、見通しが悪くなっていたので、草刈りをすることで、快適に利用できるようになりました。
この時期は、連日、最高気温が35度を超え、37度になることも珍しくないくらいに暑く、少し作業をしては水分を補給。毎日、4リットルの水を山に担ぎ上げ、飲んでいました。

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道の草刈りが終わると、いよいよ森林の再生へ。
まずは、スギやヒノキの人工林の林床に繁茂している笹を刈り、地面に光が届くように。
これで、人工林の管理作業もしやすくなります。
地面に多様な植物が入り、また、その植物に依存する動物が入ることで、生態系の多様性を図ります。また、それにより、土地も豊かになり、災害に強くなることを期待します。

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刈り終わった道の周辺から作業を森の中へ広げていきます。
斜面の勾配が急で、笹は背丈の倍ほどにも育って密集し、刈り倒した笹で足が滑るなど作業は思っていた以上に大変でした。
斜面の笹の中には、スギやヒノキの落枝が散在し、落枝を少しずつ取り除きながらの作業となりました。
作業の後は、景観がスッキリし、遠くまで見渡せるようになりました。

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なかよしの道周辺のスギ・ヒノキ林の草刈りが終わると、次は、広葉樹林の草刈りへ。
なかよしの道に続くひのきの道は、作業前は、笹をかき分けながら進むような道でした。
人工林同様、まず、道の部分の笹を刈り、次に道の法面部分を刈り、それから斜面の部分に作業を拡大していきました。
ここでも、沢山の落枝が笹の中に埋まっていて、一旦機械を止めて、落枝を取り除く作業の連続でした。さらに、創造の森の多くの部分は、昔、ぶどう畑だったので、笹の中に石垣やぶどう畑に使われていたワイヤーが残っていたりで、それらに刈払機の刃が当たり、刃の回転が止まったり、刃から火花が飛んだりすることが度々。
斜面の笹を刈り終わると、そのような苦労が払しょくされる景観となりました。

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手入れすることで見えてきた、本来の森の美しさ ~ケヤキ林~

斜面の笹を取り除くと、想像以上の美しい景色が現れてきました。
約30年前に植えられたケヤキが立派に育ち、白い幹が地面から立ち上げっている様がとても美しいです。
大阪で、このようなケヤキのまとまった林は、そんなにないと思います。
創造の森の自慢の景色です。
特に、最近は、黄葉した葉が、幹の白と青い空の間に広がり、とても美しい景観をみせてくれています。
ケヤキ林が再生してきました。

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草木で隠れていた古墳が現れました ~平野・大県古墳群~

柏原市には、沢山の古墳があり、この辺りは、「平野・大県古墳群」と呼ばれる古墳群が分布しています。この創造の森を作る時の調査で、新しく発見された古墳もあります。
それらの古墳の多くは、笹の中に長らく埋もれていましたが、笹を刈ることで、また、顔を出しました。石室の石材は、高尾山の下方に露頭した花崗岩の岩盤から切り出し、急斜面を降りて、この場に運ばれていたとのことです。
森の中を歩きながら、傍らにあるこのような古墳たちを、沢山の方に見ていただきたいと思います。

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10月に入ると、作業にも慣れてきたことから、いよいよチェーンソーによる伐採作業が始まります。そのための特別教育を座学と実習を織り交ぜながら3日間行いました。

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最初はこわごわのチェーンソーの扱いも、日を追うごとに慣れてきました。
密に植えられているところや、形の悪い木を間引いて、地表に光を入れていきます。
また、歩道に横たわる倒木の処理も行いました。

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創造の森 Before After

ひのきの道となかよしの道の分岐点付近の作業の進捗を、なかよしの道側で見たところです。

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ひのきの道となかよしの道の分岐点付近の作業の進捗を、ひのきの道側で見たところです。

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高尾山の山頂近くの歩道の草を刈った様子です。

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高尾山の山頂から少し降りた辺りにあるイチョウ並木周辺の歩道の草を刈った様子です。

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スギ・ヒノキの林が、明るく、見通しよくなりました。

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生い茂った笹の中には、倒木も交じっています。からまった笹や蔦を取り除きながら、それをチェーンソーで小切りにして、きれいに整理していきます。

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なかよしの道といにしえの道が合流する付近の森林を整備した様子です。

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山を放置しておくと、竹林がどんどんと拡大していきます。
創造の森でも、斜面の下からどんどんと拡がり、スギやヒノキを植えた林にまで侵入してきています。それらの竹をチェーンソーやノコギリで伐採していきました。
伐採した竹は、枝をきれいに落として、棹の部分は、小切りにして、斜面に積んでいきます。斜面に積むことで、土が流れるのを防ぎます。

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今回の作業を終えて ~再生への第一歩~

この活動によって、森の再生が始まることが期待されます。

より安全に散策でき、きれいになった高尾山創造の森をぜひ皆さんも訪ねてみてください。

 

また、このような作業を継続的に行っていかないと美しさは維持できません。

今後、皆さまのお力添えをいただきながら、山の再生を進めていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

森林環境保全員さんの写真