安宿郡の古墳と寺院~8~

2019年5月19日

安宿郡の郡衙(ぐんが)

 古代の郡には、郡衙と呼ばれる役所が置かれました。安宿郡にも当然郡衙があったはずですが、よくわかっていません。羽曳野市飛鳥周辺が賀美(上)郷なので、飛鳥周辺にあった可能性が高いと思われますが、これまでのところ郡衙らしき遺跡はみつかっていません。郡衙ならば、東西南北の軸に合わせた大規模な建物が規則的に配置されている例が多いのですが、そのような遺構はみつかっていません。また、木簡や墨書土器などの文字資料、官人が身に着けたベルトの帯金具、人面土器や土馬などの祭祀用具などが出土することが多いのですが、このような遺物も知られていません。

 柏原市円明町の円明遺跡から、墨書土器などが多数出土しており、郡衙の跡ではないかと考えられています。墨書土器とは、表面に墨で文字を書いた土器のことです。古代では、文字を書ける人は役人や僧侶などわずかな人に限られているため、墨書土器が出土するところは役所や寺院が多いのです。それで、円明遺跡が安宿郡の郡衙だったのではないかと考えられているのです。円明遺跡出土の墨書土器には、「上」「郡田」「平安」「倉」「安寺」「南一」「南中」などの文字があり、「郡田」は郡衙に関連するものかもしれません。しかし、これらの土器は、いずれも平安時代(9世紀)のものであり、7世紀代の遺構・遺物がみつかっていません。また、郡衙ならば整然とならぶ大規模な建物があるのですが、そのような建物跡は発見されていません。

 そのため、郡衙があったとしても、8世紀以降のものではないかと考えられています。そのように考えるならば、7世紀代の飛鳥戸評のころは飛鳥周辺に評衙が置かれ、それが8世紀に円明遺跡に移ったとも考えることができます。いずれにしても、今のところ郡衙の所在地を明らかにすることはできません。

 円明遺跡は、柏原市と羽曳野市の市境にあり、中小企業団地の造成に伴って、1970年前後に堅田直氏が発掘調査を実施されています。この調査に関連する資料が柏原市に移管されており、少しずつ整理を進めています。いずれ新しい成果を紹介することができると思います。

(文責:安村俊史)

「郡田」墨書土器
写真:円明遺跡出土「郡田」墨書土器(当館所蔵)

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