三田家と寺田家9

2018年4月29日

昭憲皇后が訪れた寺田家

 寺田家住宅は、奈良街道に面して東側にあり、東西に長い敷地をもちます。敷地の中央付近に南北方向の水路があり、これより東側は一段高くなっています。この水路は旧大和川の左岸堤防に沿った水路であり、一段高い部分は旧堤防部分に相当します。宝永元年(1704)の大和川付け替え後に川跡が市村新田となり、その後現在の建物が建築された18世紀中ごろに新田部分まで屋敷地を広げたために東西に長い敷地となりました。

 寺田家の主屋は奈良街道に面して建つ桁行9間、梁行6間のつし2階建ての建物です。屋根は切妻造りの本瓦葺き、下屋部分は桟瓦葺きの平入りとなっています。右手に土間が通りニワとなり、左手を居室としています。居室は縦長に二列の部屋が並びます。西の街道側にミセとオクミセ、次にダイドコとナンド、東奥にザシキをとり、ザシキはのちに増築しています。建築年代は明らかではありませんが、三田家とほぼ同じ明和年間ごろ(1760年代)ではないかと考えられています。

 主屋の奥には離れがあり、もとは北にウチニワ、シモヘヤ、カマヤがあり、南に三間の居室がある切妻造りの本瓦葺建物だったようです。建築は主屋と同年代と考えられています。この離れは、明治23年(1890)4月に明治天皇が大阪、奈良を行幸した際に、昭憲皇后一行が「御昼所」の本陣として利用した建物です。鉄道を利用した一行のために、寺田家の東に仮設の乗降場が設けられました。

 寺田家の建物は、主屋・離れだけでなく、蔵などを含めて平成17年(2005)に国の登録文化財になっています。後世の改築の多いのが残念ですが、三田家と同様に貴重な建造物です。

(文責:安村俊史)

市村新田絵図
図:市村新田絵図・宝永5年(1708)【寺田家文書

 昭憲皇后御休憩所に伴う下賜
図:昭憲皇后御休憩所に伴う下賜・明治23年(1890)【寺田家文書

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