安福寺の夾紵棺2

2018年1月23日

夾紵棺とは

 終末期古墳の棺として、漆塗りの棺が登場します。6世紀までは見られなかった棺です。漆塗りの棺には、布を重ねた夾紵棺以外に、木棺の表面に漆を塗った漆塗木棺、樹皮などを編んで作った籠の表面に漆を塗った漆塗籠棺、粘土を焼いて作った陶棺の表面に漆を塗った漆塗陶棺、石棺の表面に漆を塗った漆塗石棺がみられます。

 この中で、もっとも古い事例は6世紀末のシシヨツカ古墳にみられる漆塗籠棺です。漆塗籠棺は、シシヨツカ古墳の近くのツカマリ古墳、アカハゲ古墳にもみられ、香芝市の平野塚穴山古墳にもみられます。漆塗籠棺に続いて夾紵棺が作られるようになったようです。漆塗りの木棺、陶棺、石棺は、夾紵棺の模倣と考えていいでしょう。

 夾紵棺は漆を塗りながら布を重ねて作られたものですが、布を重ねただけで崩れずに棺として使えるのか?という疑問をお持ちの方もおられると思います。確かに完全な形で現存する夾紵棺はみられないのですが、木棺よりも丈夫だったと考えられます。漆の防腐作用や防水作用も期待できます。それでは、夾紵棺はどのようにして作られたのでしょう。

 まず、粘土や木などで原型を作ります。その外側に漆を塗り、ある程度乾燥すれば布を重ねてまた漆を塗ります。それがある程度乾燥すれば、また布を重ねて漆を塗ります。これを何度も繰り返して一定の厚さになると、原型をはずします。最後に表面に丁寧に漆を塗って仕上げます。何度も乾燥の工程が入るので、完成にはかなりの月日が必要となります。また、製作技術も木棺の比ではありません。高度な技術と長い製作期間を要する夾紵棺は、最高級の棺と認識されていたことでしょう。

(文責:安村俊史)

夾紵棺実測図

図:安福寺の夾紵棺実測図
(猪熊兼勝「夾紵棺-玉手山安福寺蔵品に関連して-」『論集終末期古墳』より)

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