~天井川と洪水1~
どうして天井川になるのか?
川底が、まわりの土地よりも高い川を天井川といいます。川の流れによって運ばれてきた土砂が堆積し、川底が周囲よりも高くなってしまった川です。
川は、自然のままにしておくと、洪水のたびに流れを変えていきます。どこかで堤防が切れて水が流れ出すと、その流れが新しい川になっていくのです。大阪平野は、今から6,000年ほど前には大きく海が入り込んでいました。それが、気温の低下に伴う海水面の低下と、北からは淀川が、南からは大和川がどんどん土砂を運んでくるために海は埋まり、平野となっていきました。そのときも、大和川はなんども流れを変えながら、徐々に平野部を拡大させていったのです。
しかし、洪水のたびに川の流れが変わっていては、その近くに住む人たちにとって迷惑なことです。そこで、川がいつも同じところを流れるように、堤防を大きく強くし、途切れることなく堤防を造って、川の流れを固定するようになりました。そうすれば、川の近くまで水田などの耕作地を広げることができ、その耕作地が洪水の被害を受けることも少なくなります。
ところが、土砂は相変わらず運ばれてくるため、川底は次第に高くなっていきます。川底が高くなると洪水がおこりやすくなるため、堤防をさらに大きくします。それでも、川底には土砂が堆積していきます。これを繰り返しているうちに、川底が周辺の土地よりも高くなり、天井川になってしまうのです。天井川は、流れの緩やかな平野部の川でよく見られます。そして、付け替え前の大和川も天井川でした。
天井川になると、洪水の被害が大きくなってしまいます。水が周辺よりも高いところを流れているのですから、堤防が切れると水は一挙に周辺に流れ出し、大規模な洪水をおこします。そして、川底のほうが高いため、あふれ出した水が川に戻ることはありません。周辺には、いつまでも水が溜まったままになってしまい、洪水の被害が長引くことになるのです。
(文責:安村俊史)
図:どうして天井川になるのか?