堤を築く2

2016年9月13日 (文化財課)

「川違新川普請大積り」

  大和川のつけかえ運動を中心になって進めた中甚兵衛の残した史料が、中甚兵衛十代目の中九兵衛氏より当館に寄贈され、現在は当館で所蔵しています。その中に「川違新川普請大積り(かわたがえしんかわふしんおおつもり)」と「大和川新川之大積り」があります。これは、大和川つけかえ工事の設計書です。「川違新川普請大積り」には、工事区間とその間の河床の掘削土量や堤防の盛土量などが記されています。そのために必要な人足の数や費用も積算していますので、今の見積書を兼ねたものとなっています。綿密な計算に基づく設計書に、当時の技術や知識の高さを感じます。

 設計では、新大和川の長さが7.980間(約14.5km)、敷地380町8反(約380ha)、掘削土量221,250坪(約130万㎥)、堤盛土量201,320坪(約119万㎥)、人足2,445,655人、費用は銀3,668貫482匁5分(金換算で約61,000両)となっています。実際の工事は、変更された部分もあり、金71,500両を要しています。設計段階よりも工事費はふくらんでいます。

 ここには、堤防の大きさが北堤(右岸堤防)で根置15間(27.2m)、馬踏3間(5.4m)、高さ3間(5.4m)、南堤(左岸堤防)では根置13間(23.5m)、馬踏3間(5.4m)、高さ2.5間(4.5m)となっています。根置(ねおき)とは堤防の基底部のこと、馬踏(ばふみ)とは堤防の上面のことです。

 右岸堤防のほうが大きくなっている理由は、この付近では北に向かって地形が緩やかに下がっており、北側の右岸堤防への水当たりが強くなるためと考えられます。それとともに、もし右岸堤防が切れたり、水が堤防を越えたりすると、河内平野が淀川まで一面水につかってしまい、大坂市中でも大きな被害がでると考えられます。左岸堤防が切れても、左岸に沿った数百mの土地に水が滞るだけで、被害を小さくすることができます。左岸に暮らす人々にとっては迷惑な話ですが、被害の軽減と大坂市中を守るという考えが幕府にあったのは間違いないと思います。

 それでは、この設計どおりに工事が行われたのでしょうか。実際の発掘調査成果をみていきたいと思います。

※1間(けん)は6尺(しゃく)、約1.8mです。1坪(つぼ)は1間×1間×1間で、約5.9㎥です。

(文責:安村俊史)

川違新川普請大積り
写真 「川違新川普請大積り」

【秋の企画展のお知らせ】
平成28年9月13日(火)から12月11日(日)まで、企画展「堤を築く-大和川のつけかえ工事-」を開催しています。

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