~おひなさん8~

2016年3月9日

ひな道具

 ひな人形とともに飾られる小さな道具類を「ひな道具」といいます。もともと、ひな人形は人形遊びに始まり、ままごと遊びのようなことをしていました。そこで、遊びに必要な食器や台所道具などがつくられ、それらが人形と一緒に飾られるようになったのです。だから、飾りというよりも、遊びの道具そのものだったのです。

 それが、ひな人形がきらびやかになるとともに、道具も豪華になっていきました。そして、女の子の成長を祝うひな祭りとして、嫁入道具なども並べられるようになりました。蒔絵や金銀で飾られた箪笥(たんす)や長持(ながもち)、葛篭(つづら)、鏡台、茶の道具などが飾られました。嫁入駕籠もよくみられます。ごちそうをのせる膳や重箱、お酒の道具などもあります。女の子の幸せな結婚を願ってということでしょう。これら嫁入道具を並べることと、ひな人形を片付けるのが遅くなると結婚が遅くなるといわれることと関係があるのでしょう。

 江戸時代、幕府は豪華なひな人形を取り締まりましたが、ひな人形よりも早く、豪華なひな道具を禁止するお触れを出しています。それでも、漆塗りのものにはじまり、銀製やガラス製、象牙製のひな道具なども愛用されました。

 中でも注目されるのが芥子びなに伴うひな道具です。細かい細工がなされ、その技術の高さがわかります。江戸の橘屋信濃や上野池之端の七沢屋などの雛師がつくったひな道具は、家を買うよりも高いといわれるほど高価なものでした。

 ひな祭りには、白酒や菱餅などの食べ物もお供えします。これも、ひな遊びの影響でしょう。白酒は、蒸した米と麹にみりんをまぜてつくった甘い濁り酒です。菱餅は、紅、白、緑の三段に重ねた菱形の餅です。紅は桃の花、白は白酒、緑は草餅の色を表しているといわれます。実際にひな人形の前で、白酒を飲んだりひなあられを食べる風習は、今でも残っています。これは、女の子の楽しみだったのです。

(文責:安村俊史)

当館所蔵ひな道具

当館所蔵ひな道具

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