知恵と技術~大和川のつけかえ工事4~

2015年8月24日

川底を掘らずに

 つけかえ工事の計画図面とも呼ぶべき「地形高下之事(図)」(中家文書)をみると、新大和川の測量は1町(約109m)ごとに杭を打ち、その地点の高さを記録していったことがわかります。つけかえ地点から河口まで130町(約14.2km)、高低差が6丈1寸7分(約18.2m)であったことがわかります。実際の高さを線で結んで黄色く塗っています。これに重なるように斜めに引かれた線が新大和川の川底の高さになります。測った高さと計画線との差の分だけ、川底を掘り下げればいいということになります。図には、水平の基準線と堤防の高さの線も記入されています。

 図の右端に、図の線の意味などの解説が加えられています。水平の基準線は、つけかえ前の大和川の川底の高さを基準としたようです。1番杭との高さの差が6尺2寸6分なので、つけかえ前の大和川の川底は周辺よりも約1.9m高い天井川だったことがわかります。河口の杭が131番杭で、基準線との高さの差は6丈6尺4寸3分(約20.1m)となります。ここで、1町の勾配が5寸7厘(約15.4cm)と記入されています。これは、高さの差を131で割ったものですが、実際には、1番杭と131番杭の高さの差(6丈1寸7分)を130で割った値、4寸6分(約14.0cm)が1町の勾配、100mにつき約13cmの勾配となります。

 計画では、1番杭の高さを基準としているようなので、2番杭、すなわち1番杭から1町(109m)の地点で4寸6分下がることになります。その計画値よりも実際の地形のほうが高ければ、その差だけ掘り下げることになります。もし計画値のほうが高ければ、掘り下げる必要はないということになります。
 新大和川は、このように綿密な測量と計画によって、できるだけ川底を掘り下げずに工事を進めています。どうしても掘り下げなければならないところの土で、堤防を築く土が確保できると計算されたことと、川底を掘り下げるのは重労働で、たくさんの人が必要となることが、その理由です。そこで、できるだけ川底を掘らない方法が考えられたのです。これによって、工期も早くなり、経費も安くおさえることができました。

(文責:安村俊史)

地形高下之事

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