知恵と技術~大和川のつけかえ工事3~

2015年8月19日

新たな測量技術

 測量を行う際に問題になるのが、水平を決める方法です。水平線が歪んでいたら、高さも変わってしまいます。水平を求めて高さを調べることを「水盛(みずもり)」といいました。水を張って水平を求めたために、このように呼ばれたのでしょう。その水平を求めるための道具を「水盛器(みずもりき)」といいます。現在ではこのような道具を「水準器(すいじゅんき)」、このような方法を「水準測量」といいます。道具はずいぶん変わりましたが、基本的な方法は今も変わりません。ただ、最近はGPSを使った測量も増えてきましたが。

 大和川つけかえ工事が行われた300年ほど前には、前回も紹介したような板に溝を彫っただけの水盛器が使われていたと考えられますが、やはり多少の誤差は生じたでしょう。ちょうど同じころ、紀伊国(今の和歌山県)の大畑才蔵という人は、非常に正確な水盛器を発明していました。

 1本の細竹の中央と端の3箇所に、この竹から直立する竹を差し込みます。中央の竹(水差し口)から水を入れると、両端の竹(水溜)から水が出てきます。このとき水溜の高さが同じならば、2本の水溜の上面まで水がくると水平ということです。割りくさびを使って水盛器が水平になるように高さを調節します。そのとき2箇所の見当の高さも同じになるので、この二つの見当を見とおして目的地に建てた間竿(けんざお)の目盛を読めば、高さがわかります。この道具を使うと、一々糸を張らなくてもすむので、早く測量ができるうえ、糸を張るよりも正確な測量ができます。

 大畑才蔵は、この道具を使って数本の用水路をつくっています。工事の早さと緻密さに、当時の人々は驚いたようです。大畑のつくった水盛器は、30~40年前まで使われていた平板測量のアリダードと呼ばれる道具とほとんど変わりません。農民出身の大畑は、工夫と改良でこのような道具、測量方法を考案していったようです。昔の人の知恵と技術にはすばらしいものがあります。

 大和川のつけかえ工事にも大畑の技術が取り入れられていた可能性はあるのですが、史料が残っておらず、なんともいえません。おそらく旧来の水を張って糸を張る方法で行われたのではないでしょうか。

(文責:安村俊史)

大畑才蔵

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