これからの鳥坂寺
国史跡に指定
市内の高井田横穴、松岳山古墳、田辺廃寺に次いで平成24年1月24日、鳥坂寺跡の約15,000平方メートルの範囲が国史跡に指定されました。ここに至ることができたのも、地権者の方々や、地元の方々のご理解、ご協力があったからに他なりません。
鳥坂寺跡の史跡指定範囲
鳥坂寺跡保存活用基本構想
同年2月、公募市民と学識経験者で構成された鳥坂寺跡保存活用基本構想等策定委員会から、「鳥坂寺跡保存活用基本構想」が市長に提言されました。そこで示された公開・活用方法の方向性を軸に、今後、鳥坂寺跡の「再興」を進めていく予定です。
1.基本理念
高度経済成長の時代を終え、物質的に満たされた社会が訪れた現代、物の豊かさに比して心の豊かさが薄れてきたと言われて久しい。
私たちは、物の豊かさと心の豊かさのバランスのとれた社会に生きることを望んでいる。そのためには、心を育てる活動がなくてはならず、そのとき歴史・文化、自然が果たす役割には大きいものがあると信じている。
鳥坂寺は『続日本紀』(しょくにほんぎ)に記された河内六寺の一つであり、仏教史上重要な寺院である。同時に極めてよい状態で遺構が保存されている歴史上貴重な遺跡である。併せて、本市は難波と大和を結ぶ水路・陸路が交錯する交通の要であったことから、多くの文化財が残され、歴史的に恵まれた地域でもある。この鳥坂寺と玉手山丘陵の北端に建つ片山廃寺とが大和側の両岸にそびえ建つ威容は、当時の社会や文化が創り出した先進的な景観として、多くの人々を魅了したに違いない。
「文化遺産に学び未来に生きる力をのばします」と柏原市民憲章に示されたとおり、これらを次代の市民に伝えつなげることは現在に生きる私たちの責務であり、将来本市を担っていく市民に対する重要なメッセージといえる。
本構想は、鳥坂寺跡の持つ歴史的重要性を認識し、将来に向かって保存・活用していくための指針であり、本市に分布する、さまざまな遺跡の活用も含めて、歴史のまちづくりの柱となるものである。
2.基本方針
1.史跡公園としての整備
鳥坂寺跡は、史跡公園として整備を行う。その前提として、現在3つの地域に分散された用地を一体化するとともに、計画用地の公有化を図ることが望ましい。
2.多様な利用者に向けた整備
本市および本市周辺には、多くの歴史的・文化的資産が身近に存在していることを、鳥坂寺の整備を通じて広くアピールするとともに、歴史愛好家だけでなく、多くの人にとって容易に利用できる施設として整備を進める。
3.復元を含めた具体的な展示
古代の空間をリアルに体感できるよう、発掘調査や研究成果に基づいて、できるだけ忠実な再現を行い、「歴史が見える」施設として具体的な展示を行う。
4.人と歴史の交流
歴史を十分堪能できるよう、遺跡・遺構を明示するとともに落ち着いて古代に想いをはせることができる憩いの空間を用意し、さまざまな人々との出会いを楽しめる広場とする。
5.魅力の多様化
子どもからお年寄りまで、世代を超えて多くの人々が利用できるよう、多様な魅力要素の導入や開放時間帯、出入りの利便性にも意を配り、利用頻度を高めるような配慮を行う。
6.周辺整備とネットワークの構築
史跡を有効に活用できるよう、河内六寺や周辺に点在する、さまざまな歴史的資産の整備、サンヒル柏原・歴史資料館など、公共設備との連携利用など、市内周辺を含めた歴史のネットワークを構築する。
3.基本目標
1.利用と管理
整備計画を策定するにあたっては、基本方針にのっとった利用のあり方に意を配り、それにふさわしい運営管理を検討し、主旨が全うできるように進める。
2.市民参加
基本構想策定委員会に見られるように、市民の声を反映しながら整備計画が立てられていくよう、運営管理も含めて、市民の参加を促しながら計画の策定を行うことが望まれる。
3.周辺施設との連携
周辺施設とのネットワークを形成するために、本計画の進捗に応じて、周辺施設との連携を図りつつ、計画の策定を行うことが望まれる。
4.対象範囲
史跡として指定された本来の範囲は当然のことながら、利便性を高めるために周辺エリアも含めた整備が望まれるところである。したがって、本来のエリアである1.中心となる中核エリア2.神社エリア3.公園エリアに加え、4.拡大エリアを設定し、一回り大きな範囲を構想・計画の範囲として設定する。
5.整備期間
整備期間については、文化財への社会的な理解を推し進め、積極的な予算取得をもとに、早期整備が望まれるところである。
市では、今後とも、アンケートなどを通じて、市民の皆さんのご意見をお聞きしながら、鳥坂寺跡の保存・活用を進めていきたいと考えています。文化遺産に学び未来に生きる力を伸ばすために。
1/30スケール鳥坂寺復元模型(柏原市市民歴史クラブ製作)