亀の瀬こぼればなし(9)

2015年4月28日

 奈良県から大阪府へと流れる大和川。その府県境付近を「亀の瀬」といいます。

 ここ亀の瀬は、役小角(役行者)が開いた葛城修験の場でもあったのです。役小角は、7世紀末ごろに葛城山で呪術者として活躍した人物ですが、すぐれた呪術のために伊豆に流されたこともありました。その役小角が葛城山系につくった28箇所の経塚を、「葛城二十八品(ほん)」といいます。経塚とは、お経を埋納した地のことで、「葛城二十八品」には法華経が納められています。和歌山市の友ヶ島にはじまり、葛城の峰を東へと進んで最後の二十八番目が、大和川の亀の瀬なのです。この一品から二十八品までたどることが葛城修験とされるものです。多くの行者が、役小角が開いたという二十八品をたどって修業を重ねてきました。

 それでは、亀の瀬の経塚とはどこにあったのでしょう。それは、大和川の中にある「亀岩」であったとされています。室町時代には、亀岩に文字が刻まれ、宝筐印塔が並んで建っていたという記録もあります。しかし、江戸時代の記録には文字も宝筐印塔もみることはできません。本当にあったのでしょうか。

 また、亀の瀬の南にある明神山をその地とする記録もあります。明神山の山頂に経塚があったというのです。実態はわかりませんが、のちに修験道が盛んになると、その祖である役行者が開いたということで、多くの修行者が訪れるようになったようです。現在では、大和川右岸にある竜王社が二十八品とされており、その地を訪れる人もいます。竜王社は、剣先船の船着き場があった地で、船仲間が運航の安全を祈った祠があります。ここには、「大坂剣先船問屋中」と刻まれた石燈籠も建っています。

 葛城山系(金剛山系)の北端にあたる亀の瀬の地は、修業の終着点に相応しいのかもしれません。

(文責:安村俊史)

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