最多8人の実習生、多彩なメニューで今年も実施 歴史資料館博物館実習

2012年9月3日

 学芸員資格の取得を目指す学生の博物館実習が、毎年行われている。柏原市立歴史資料館(同市高井田)では、各大学からの依頼を受け、夏休みの時期に実習生を受け入れている。その受け入れ人数が、今年は、計4大学・計8人にも上った。1度に8人の実習生は、同歴史資料館にとって最多の人数、これだけ多人数での受け入れは、今後はないだろうという。

 8人の実習生は、大阪教育大学の田端麻希さん(22)、浪花光樹さん(22)、藤井友里香さん(22)、三島菜々さん(22)、と近畿大学の松本尚徳さん(20)、上村一矢さん(21)、武庫川女子大学の井上彰子さん(21)、京都造形芸術大学の田中清加さん(22)。男性3人、女性5人。近畿大学の松本さんと上村さんが3年生で、他は4年生。

 同歴史資料館の今年の実習期間は、8月23日(木)から31日(金)までの休館日などを除く7日間、時間は午前9時から午後5時まで。8人は、例年どおり、民具や古文書の整理と目録作り、考古資料や美術品の梱包などの実習メニューに取り組んだ。文化財や史跡のフィルムでの写真撮影と焼付けにも挑戦した。毎年実習生を指導している同歴史資料館の安村俊史館長と柏原市教育委員会文化財課の石田成年主幹に加え、今年は同文化財課の山根航さんが指導担当者に加わり、計3人で指導にあたった。昨年に引き続き同歴史資料館臨時職員(古文書解読)の天野忠幸さんと小橋勇介さんがサポートした。

 来館者に見えないところで苦労するのが学芸員だとされるが、展示品の解説や講座の開催、シンポジウムの運営など、表にでることも少なくない。「それらも含めて学芸員の仕事」と安村館長。同歴史資料館では、例年、こうした多くの側面を網羅する多彩な実習メニューを心掛けているという。 実習の仕上げは、スポット展示。今回の素材は、昭和20年代から30年代ごろの土釜や花形ガスコンロ、吸入器など。スポット展示とは、市民から寄贈を受けた民具や古文書などを2か月ごとに入れ替える小展示。実習生には、その企画から準備、説明パネルの作成、ディスプレイまで、すべてが任される。同歴史資料館博物館実習恒例の“卒業試験”だ。8人は、それぞれ役割分担を決め、実習最終日に、ようやく展示を完成させた。最終日は、午後6時ごろまで作業に取り組んだ。ただ素材を並べるだけでなく、「これは何?」などとクイズ形式で見学者の興味を引くよう工夫している。タイトルは、「のぞいてみよう、昔のくらし」。 実習終了後、8人は、「ここへ実習に来て本当に良かった」、「事前に想像していた以上にいろいろな仕事があって驚いた」「ぜひ学芸員になりたいと思った」などと話していた。指導を担当した山根さんは、8人を「互いに意見を出し合うなど、協力しあって実習に取り組んでいた」と評価していた。

 「後継者育成のための館の責務として、今後とも、できる限り受け入れていきたい」と安村館長は話している。

 スポット展示「のぞいてみよう、昔のくらし」は、10月末まで同歴史資料館常設展示フロア入口横のスペースで展示される。

 

【学芸員】

 博物館や美術館などの専門職員で、こうした専門職員になるためには、国の資格である学芸員資格が必要とされている。学芸員資格を取得するには、博物館などで一定年数の実務を経験し文科省の認定を受けるか、大学で博物館概論や博物館資料論、博物館展示論、博物館教育論など文科省所定の単位を修得し、さらに博物館実習を受ける必要がある。大学卒業時に学芸員資格が取得できる。大学で取得するのが一般的だという。従来、大学で学芸員資格を取得するために必要な単位数は計12単位だったが、今年4月から計19単位に改正された。 毎年、全国で約1万人が資格を取得すると思われるが、他方、実際に学芸員として就職できるのは100人にも満たないとされる。そして、実習に手を取られ、通常業務に影響が出るなど、受け入れる側の負担も小さくないという。

 

2012実習生1 2012実習生2

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