文化財の区分 国宝、重文、史跡って...?

2014年9月3日

 一口に「文化財」といっても、いろいろな種類があります。国 宝、重要文化財、史跡・・・。また、無形文化財、埋蔵文化財、登録文化財などといったものもあります。さて、これらは、どう違うのでしょうか。その前に、 そもそも文化財とは何なのでしょうか。突然、聞かれても困らないように、少し調べてみることにしましょう。

 

1 形態・性質別による区分

 「文化財」とは何か、その区分は、などについては文化財保護法(昭和25年法律第214号)で、次のように定められています。

 

 

区  分

説      明

有形文化財

 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書、その他の有形の文化的所産で、歴史上、芸術上、価値の高いもの(これらのものと一体をなして、その価値を形成している土地その他の物件を含む)。考古資料、学術上価値の高い歴史資料。

無形文化財

 演劇、音楽、工芸技術、その他の無形の文化的所産で、歴史上、芸術上、価値の高いもの。

民俗文化財

衣食住、生業、信仰、年中行事などに関する風俗習慣、民俗芸能、民俗技術などと、これらに用いられる器具、家屋などの物件で、国民の生活の推移の理解のため、欠くことのできないもの。 有形民俗文化財と無形民俗文化財の区分があります。

記念物

 1.貝塚、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で、歴史上又は学術上価値の高いもの(史跡)。2.庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝で、芸術上、鑑賞上、価値の高いもの(名勝)。3.動物(生息地、繁殖地、渡来地を含む)、植物(自生地を含む)、地質鉱物(特異な自然現象の生じている土地を含む)で、学術上、価値の高いもの(天然記念物)。

文化的景観

地域での人々の生活や生業、その地域の風土によって形成された景観地で、国民の生活や生業の理解のために欠くことのできないもの。

伝統的建造物群

周囲の環境と一体となって歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で、価値の高いもの。

 

 

 この表の説明にあるように、場所や植物、動物なども文化財となります。それだけでなく、景観や建造物群も文化財となるのです。また、重要無形文化財(技術など)を持っている人を「人間国宝」(重要無形文化財保持者)と呼ぶこともあります。 ところで、これらの文化財のうち、土地に埋蔵されている(埋まっている)ものを埋蔵文化財といいます(文化財保護法第92条)。もっとも、無形のものは埋まりようがありませんので、現実的には、物品や遺跡などで、土地に埋蔵されているもの、ということになるでしょう。未発見のものも含まれます。

 

 

区  分

説      明

埋蔵文化財

 土地に埋蔵されている文化財。建物、土器、瓦、石器、彫像などの物品(有形文化財)、寺跡、城跡などにかかわらず、埋蔵されて(埋まって)いる文化財は、すべて埋蔵文化財です。

 

2 指定などの別による区分

 文化財保護法は、重要な文化財を保護し、活用するため、指定や登録の制度を設けています。国宝や重要文化財、史跡などの区分は、その指定によるものです。

 

指定文化財

区   分

説     明

 

国宝

 重要文化財のうち、世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるもの。

重要文化財

 有形文化財のうち、重要なもの。

重要無形文化財

 無形文化財のうち、重要なもの。

重要民俗文化財

 民俗文化財のうち、特に重要なもの。重要有形民俗文化財と重要無形民俗文化財の区分があります。

 

特別史跡名勝天然記念物

 史跡名勝天然記念物のうち、特に重要なもの。

史跡名勝天然記念物

 記念物のうち、重要なもの。「史跡」、「名勝」又は「天然記念物」のどれかに指定されます。

 

「国宝」とは、重要文化財の一種で、重要文化財の中でも価値が高いものをいいます。特別史跡名勝天然記念物も同じように、史跡名勝天然記念物の中で、特に重要なものをいいます。

 

選定による文化財

区   分

説     明

重要文化的景観

 都道府県や市町村が定める、景観法(平成16年法律第110号)に規定する景観計画区域又は景観地区内にある文化的景観であって、都道府県などが保存のための必要な措置を講じているもののうち、特に重要なもの。

重要伝統的建造物群保存地区

 伝統的建造物群と、これと一体をなして、その価値を形成している環境を保存するため、市町村が文化財保護法の規定により定めている伝統的建造物群保存地区の全部又は一部であって、その価値が特に高いもの。

 

登録による文化財

区   分

説     明

登録有形文化財

 重要文化財以外の有形文化財のうち、文化財としての価値から保存や活用のための措置が特に必要とされるもの。

登録有形民俗文化財

 重要有形民俗文化財以外の民俗文化財のうち、文化財としての価値から保存や活用のための措置が特に必要とされるもの。

登録記念物

 史跡名勝天然記念物(仮指定を含む)以外の記念物のうち、文化財としての価値から保存や活用のための措置が特に必要とされるもの。

 

 重要文化財や史跡などは、文化審議会の答申を経て、文部科学大臣が指定します。  重要文化財や史跡などに指定されると、文化財保護法に基づき、管理や届出、公開、調査、報告、復旧、環境保全の義務などが課されることになります。  輸出についても制限を受け、重要文化財(国宝を含みます)は、原則、輸出が禁じられています。重要有形民俗文化財は文化庁長官の許可が、登録有形文化財は文化庁長官への届出が必要です。  修理などでも文化庁長官の監督などを受ける場合がありますが、他方、国の補助金交付を受けることもできます。重要文化財などとしての価値を失った場合やその他特殊の事由があるときは、指定が解除されることもあります。  国の指定以外に都道府県や市町村が、それぞれの条例に基づき、指定することもあります。いわゆる「府指定文化財」や「市指定文化財」です。これらと区別するため、文化財保護法に基づく指定文化財を「国指定重要文化財」「国指定史跡」などと呼ぶこともあります。  指定と併せて、選定による国の文化財もあります。重要文化的景観と伝統的建造物群保存地区は、市町村などの申し出に基づき、文部科学大臣が選定します。  また、文化財登録原簿に登録された文化財を登録文化財といいます。指定制度とは別の制度で、平成8年に設けられました。指定制度をおぎなうものといえる でしょう。当初は、建造物だけが対象でしたが、平成16年からそれ以外の有形文化財や記念物も対象となっています。ただし、重要文化財などに指定される場 合は、登録からはずされること(登録抹消)になります。

 

3 生き残っている昔の区分、重要美術品

 かつて、重要美術品等ノ保存ニ関スル法律(昭和8年法律第 43号)という法律がありました。昭和25 年(1950)、文化財保護法の施行により、国宝保存法(昭和4年法律第17号)や史蹟名勝天然記念物保存法(大正8年法律第44号)などとともに廃止さ れ、文化財保護法に一本化されました。  かくして、根拠となる法律がなくなることによって、この時点で「重要美術品」という区分はなくなったはずなのです。  「重要美術品」の多くは改めて重要文化財に指定しなおされました。中には重要文化財指定にとどまらず、国宝に指定されたものもあったようです。ところが、すべての「重要美術品」が、文化財保護法により指定しなおされたわけではなく、「指定漏れ」も存在したのです。  そして、新しく施行された文化財保護法は、その附則第4条で、次のように規定しています。  この法律(文化財保護法)施行の際、現に重要美術品等ノ保存ニ関スル法律第2条第1項の規定により認定されている物件については、同法は当分の間、なおその効力を有する。  この規定により、文化財保護法による新たな指定から、いわば漏れ落ちた「重要美術品」も、なお、「重要美術品」として区分され続ける(規制され続ける)こととなったのです。つまり、この区分(認定)は、今も生き続けているのです。  重要文化財に指定しなおすか、認定を取り消すか、その作業は、現在に至るも、あまり進んでいないようです。  ちなみに重要美術品等ノ保存ニ関スル法律は、わが国の貴重な古美術品が海外に流失するのを防ぐために制定された法律です。とにかく流失を防ぐために、多 数の美術品を大急ぎで認定したためか、価値がよくわからないまま認定してしまったり、現在では重要文化財に指定されているようなものが認定されていなかっ たり、ヨーロッパの絵画が認定されたり、などといったことがあったということです。  余談ですが、文化財保護法施行前、前述の国宝保存法の時代には、「重要文化財」という区分がありませんでしたので、現在の「重要文化財」(国宝を含みますが)に相当するものを、すべて「国宝」として指定していました。

 

4 柏原市の文化財指定

 特に大切な文化財を適切に保存し活用するために、国が文化財保護法(昭和25年法律第214号)に基づいて、重要文化財や史跡などを指定しているのと同じように、都道府県や市町村でも、それぞれ条例を定めて独自に文化財を指定し、保存と活用に努めています。

文化財保護法第182条第2項 地方公共団体は、条例の定めるところにより、重要文化財、重要無形文化財、重要有形民俗文化財、重要無形民俗文化財及び史跡名勝天然記念物以外の文 化財で当該地方公共団体の区域内に存するもののうち重要なものを指定して、その保存及び活用のため必要な措置を講ずることができる。  柏原市でも、柏原市文化財保護条例(平成18年柏原市条例第55号)を定めて、市の文化財を指定しています。また、大阪府でも大阪府文化財保護条例(昭和44年大阪府条例第5号)を定め、府の文化財を指定しています。  柏原市の指定文化財の区分などは、次のとおりです。

 

区   分

説     明

市指定有形文化財

 市の区域内にある有形文化財のうち、重要なもの。 (文化財保護法により重要文化財(国宝を含む)に指定されたものと大阪府文化財保護条例により大阪府指定有形文化財に指定されたものを除く。)

市指定無形文化財

 市の区域内にある無形文化財のうち、重要なもの。 (文化財保護法により重要無形文化財に指定されたものと大阪府文化財保護条例により府指定無形文化財に指定されたものを除く。)

市指定有形民俗文化財市指定無形民俗文化財

市の区域内にある有形民俗文化財、無形民俗文化財のうち、重要なもの。 (文化財保護法により重要有形民俗文化財、重要無形民俗文化財に指定されたものと大阪府文化財保護条例により大阪府指定有形民俗文化財、無形民俗文化財に指定されたものを除く。)

市指定史跡名勝天然記念物

市の区域内にある史跡名勝天然記念物のうち、重要なもの。 市指定史跡、市指定名勝、市指定天然記念物のどれかに指定。 (文化財保護法により史跡名勝天然記念物(特別史跡名勝天然記念物を含む)に指定されたものと大阪府文化財保護条例により大阪府指定史跡名勝天然記念物に指定されたものを除く。)

 

 

 柏原市では、これらの市指定文化財を市文化財保護条例に規定する文化財保護審議会への諮問、答申を経て、市教育委員会が指定しています。 平成20年3月21日、高井田山古墳出土遺物を柏原市指定文化財第1号に指定し、その後、年1~2件のペースで、順次、指定しています。

お問い合わせ

文化財課
582-0015 柏原市高井田1598-1(歴史資料館内)
電話072-976-3430
ファクシミリ:072-976-3431